美大はどこへ行く?

ビッグアートには、毎年150~200人もの学生たちが会社説明会に訪れます。
全国の美大や大学院、美術専門学校、デザイン専門学校など様々です。

数年前から、学生たちの質の低下に驚いています。

まずは、技術面です。
4年制大学や大学院まで行きながら、ポートフォリオの作品が5点にも満たない人がいるのには開いた口がふさがりません。
油絵科を専攻しながら、在学中に油絵を1枚も描いていない人・・・・・どうなっているのでしょう。
聞くと、1年に10日も学校に行っていないという人までいて、不景気にもかかわらず多額の授業料を負担している父兄に同情します。
そんな人が、どうして壁画アートの会社にやってくるのでしょうか。
会社に入って、その人は一体何をやろうとしているのでしょう。

アート制作を仕事にしている会社は、いずれも少人数の零細企業ばかりです。
近年の厳しい経営環境の中では、即戦力となる人材しか受入れることができないのが現状です。
いくら人手が足りなくても、戦力の見込みがなければ採用はできません。
当社も、この2年間は新卒の採用がありませんでした。

4年制の美大生と2~3年制の専門学校生と比較すると、首席レベルの人は別として、専門学校の方が概して技術的には上です。
「資格を取るなら大学、技術を身に付けるなら専門学校」というのが、近年の傾向のようです。
そのため、美大を出てから専門学校に入り直す人も目立ちます。
何ともおかしな現象です。

昔なら、高卒より専門学校、専門学校より大学というふうに、学力も高く、初任給も序列ができていました。
しかし、最近は専門学校卒が一番戦力になり、大卒は劣る、大学院卒はもっと劣る、という順番です。

一体、どうしてこんなふうになってしまったのでしょう。

大学の関係者に聞くと、「大学は教育の場ではありません」という答え。
・・・・・・・・??????
教育の場でなければ、何なのですか、と聞くと、「学問の場です」とキッパリ。
どうも釈然としませんが、簡単に言うとこうです。
教育とは、決まったことを教え込むこと。
学問とは、各人が自ら問題意識を持って探究すること。

京都大学や早稲田大学の建学の精神「学問の自主性」が頭に浮かびました。
京都大学を誘致した西園寺公望の言葉。
「最も大事なのは学生の自覚と独立心。自ら学ぶことが教育の理想だ」
確かに立派な言葉で、同感です。
人生そのものが、「自分の人生を自ら考え、自ら学び、自分の人生を切り開いていくこと」ですから。

ただ、その言葉と実態との間には大きなギャップを感じます。
それが通じるのはほんの一握りの学生だけです。
ほとんどの学生たちは、学問の手がかりすら見つからないまま卒業させられていくのが現状です。
授業料だけいただいて、あとは放ったらかし。
学生たちは、何を学んでいいのか悶々としているだけ。
せめて、学生たちが自ら疑問や問題意識を持てるだけの、基本的な教育やサポートが必要です。

会社説明会に参加した人たちが、異口同音に次のようなことを言って帰って行きます。
・もっと早くこの会社説明会に参加すれば、学校の過ごし方が全く変わっていたと思う。
・学校の勉強と仕事とが今まで全くつながらなかった。今日、ハッキリ見えてきた。
・アートで社会に貢献できることが、こんなに沢山あると気付いた。やる気が出てきた。
・仕事として絵を描くということが、どういうことか理解できた。

企業側から見て、今の美大には全く期待が持てません。
近年、美大を希望する学生は明らかに減少しているようです。
今年、生徒が一人も集まらなかった美大予備校もあるそうです。
単に少子化の問題として片づけられることでは決してありません。

技術が身に付けられない。
だから、仕事に就けない。
「就職につながらない美大」というレッテル。
若手の技術水準の低下によって、業界のレベルが下がりますます低迷していく。
有利な就職につながらなければ、大学なんて行く意味がなくなる。
しまいに、美大不要論まで出てきそうです。

専門学校への提案です。
正規の課程(2~3年)修了後、学生からプロへの橋渡しとしてもう1年間「研究科」を設けることです。
学生たちが学校と企業とを行き来しながら、自分で仕事を選び、実践力や心構えの準備をしながらプロとして巣立っていく、フォロー過程が必要だと思います。

絵を描いたり、オブジェなどを造るのが好きで好きでたまらない人!
本当にアートの仕事をしたい人!
漫然と学校に通って卒業したら何とかなる、という考えは即捨てましょう。
まずは、いろんな会社や仕事を沢山見たり体験したりしながら、自分の目標を定め、目標達成を前提とした勉強や準備に打ち込むことです。

ビッグアートでは、学生時代からプロの世界を経験して、自信をもって社会に出ていくことをとことん応援したいと思います。
就職活動など要らない。
スカウトされる、とか学生時代に働いたことにある会社に自然に入社するといった形が一番望ましいと思います。

アートの仕事は、日本ではまだまだほとんど育っていません。
つまり、美大や専門学校を卒業しても、アートの仕事には就けないのが当たり前というのが今の日本の現状です。
本来、美大が率先してアートビジネスの研究・開発に乗り出すべきなのでしょうが。
私は、約15年間この業界で悪戦苦闘しながら、アートで社会の役に立つことをひたすら考えてきました。
既存の業界は、同質競争、マンネリ化、質の低下、価格競争など状況は悪化の一途をたどっています。
しかし、少し目を転じるとこれからの日本があらゆる場面でデザインとアートを必要としていることを、ひしひしと感じます。
つまり、「アートの新時代の幕開け」がすぐそこに来ています。
この先に、無限の新しい仕事が埋もれています。
今こそ、新しいアートビジネスの開発が急務です。

・志が高い人。
・チャレンジ精神旺盛な人。
・「絶対にあきらめない」不屈の精神を持っている人。

ビッグアートは、そんな人を探しています。