致命的な欠点が最高のチャームポイントに!


先日、2006年に施工した川口の保育園の園長から電話があり、相談に乗って欲しいとのこと。
私の顔を見るなり、「社長、ちっとも変わらないね。かえって若くなったんじゃない。夢のある仕事をしていると、年取らないんだね」とはしゃいだ笑顔で迎えてくれました。
「社長、すごいよ!あの階段は大評判だよ!」
「今度、また新しい保育園を近くに建てることにしたんで、今度は建物の設計段階から外装や看板のデザインに携わって欲しいのよ。」
「あの邪魔者だった非常階段が、この保育園の一番の人気者になるなんて、社長の発想はすごいね。」
「今度の保育園は、最初から非常階段を園のシンボルになるようにデザインして欲しいのよ。」
機関銃のように飛び出す園長の言葉に押されて、しばし聞き役に回りました。

いきさつをお話ししましょう。

2年前にこの保育園の園長から初めて声がかかり、「この建物はもともとオフィスビルで、保育園のイメージが全くないから、何とかして欲しい。それからバス通りからも、保育園だとすぐわかるようにして欲しい」という相談を受けました。
建物全体が、白っぽいタイル貼り。玄関が狭く、しかもバス通りからはうっそうとした非常階段しか目に入らない致命的な悪条件でした。
建築屋さんに相談したら、真っ先に建て替えを提案されたでしょう。

私は、建物全体をいろんな角度から観察して、現状のままで何かチャンスがないかをとことん考えます。
特に、建物の致命的な欠陥や短所を逆利用して長所やチャームポイントにするという発想が得意です。
欠点や短所もまた個性。
それに、欠点や短所は、ちょっと見方を変えると長所でもあります。
だから、短所を否定するより、短所を生かした方がかえってユニークな個性が表現できます。

欠点を無理に取り除くことは、その存在を否定することに他なりません。
人も、店も、会社も、街もそうです。
街づくりなどは特にそうです。
今まであったネガティブなものを、すべて取り除いて理想的な全く新しいものをつくる、というのは単なる暴力でしかないと思います。
しかも、どこにでもありふれた街が次々とスタンプのように出現し、その街と関わった人々の物語も愛着も一瞬にして消えてしまいます。
長所だけでなく、短所も含めて個性であり、魅力だと思います。
短所が気になるなら、今ある長所をとことん伸ばして、短所が薄れるようにすればいいと思います。
長所が見当たらなければ、その短所が長所に見えるような新しいコンセプトを打ち立てればいいのです。
私はいつもそんなスタンスで生きています。

長所だけしかないのは、ありふれていて無個性であまり魅力を感じない。
長所と短所の組合せがオンリーワンの証であり、他にない魅力の資源なのだと思います。
短所をチャームポイントにする方が、ずっと個性的で比類の無い魅力を感じます。
タレントの久本まちゃみさんなんて、均整のとれた美人よりずっと魅力的ですし、まさにオンリーワンですよね。

話を元に戻します。
園長からの今回の依頼を聞き、飛び上がるほどうれしかったです。
相手(お客様)の個性を生かし、引き出しながら、より魅力をつけていくこと。
それが、ビッグアートの求める「建物の美容師」の仕事のポリシーです。
15年間、この仕事をやってきて、少しずつでも理解者が増えてきていることを確認できて、本当に明日からの励みになりました。

今度の保育園は、来年3月の開園予定です。
建築予定現場も視察しましたが、普通では立地も地形もとてもいいとは言えません。
やりがいのある物件です。
がんばります!