オンリーワンのすすめ
ちょっと前にSMAPの「世界にひとつだけの花」がヒットし、卒業式などでもよく歌われました。
日本中で「オンリーワン」という言葉が飛び交っています。
経営セミナーなどに行くと経営コンサルタントの先生が「これからはオンリーワンをめざせ」と講義しますが、具体的な話しになるとちっとも「オンリーワン」ではありません。
最近の耳タコ言葉「エコ」と同じ、本質の抜けた一過性の流行語を念仏のように唱えているに過ぎません。
今の日本人で「エコ」の本質を真剣に考えている人がどれだけいるでしょうか。
単にエコ家電のエコポイントやエコカー割引に湧いているだけで、エコ意識が高まっているとは思えません。
「オンリーワン」も同じこと。
企業間の同質化による価格競争を抜け出すには「オンリーワン」をめざさなければいけないことは、たいていの経営者は知っているはずです。
でも具体的にはどうしていいかわからず、結局は同質化から抜け出せないでもがいている。
最近の若い人たちを見ても同じです。
個性個性と言いながら、周りと同じことばかりやっている。
個性どころか皆「金太郎飴」です。
偏差値教育、画一的なマニュアル教育の弊害ですね。
しかも、情報化社会の波に飲み込まれている。
外国とりわけヨーロッパでは人と違いを大切にするのに対し、日本人はどうも人との違いを不安がるようです。
だから、どんなにヤバい状況下でも人と同じであることに安心を覚える。
周りがそうだから自分もそれでいい。
変な国民性です。
戦後の高度成長期にはその国民性が功を奏しました。
「皆ががんばるから私もがんばる」国民全員がこぞって一生懸命に働き、世界一勤勉とまで言われるほどがんばりました。
でもここから先は、人と同じことをやってはいけないのです。
では、現実的に具体的にオンリーワンを実践するにはどうすればいいのかです。
残念ながら日本の従来の教育ではまったく教えてくれていません。
ならばオンリーワンを実践している人や企業を見つけて、見様見まねで身に付けていくしかありません。
私は、24、5年前から「オンリーワン」をめざし始めました。
「定年のない職業で一生現役で働きたい」と10年間勤めた会社を辞めた36歳の時からです。
その後、「花王ノンライバル経営」という本と出会ってピンとくるものがありました。
その頃私はVMD(ビジュアルマーチャンダイジング)の仕事をしていて、家電や化粧品、食品メーカーを相手に「売り方提案」をしていました。
花王が入浴剤「バブ」を新発売する時のことです。
入浴剤といえばそれまでは津村順天堂のバスクリンがトップで、ダントツでした。
そんな市場に参入する花王の戦略がすごく勉強になりました。
津村順天堂とはまったく異なる市場の入浴剤をめざしたのです。
どっちも同じ入浴剤だから異なる市場なんてあり得ない、と普通の人は考えます。
それは従来の考え方、固定観念です。
津村順天堂は「肩こりリューマチにバスクリン」。
つまり、中高年者がターゲットです。
それに対して、花王は「美しい肌にバブ」。
つまり、若い女性がターゲットなのです。
発売後、バブは大ヒット。
同じ入浴剤でありながら、まったく新しい市場をつくったのです。
私はサンヨー電機の独身家電「it’s」のVMDにも参加しました。
従来の家電の概念を超えた「家電はインテリア」というコンセプトです。
これも大ヒットし、以来今でも続いているロングヒット商品です。
この二つの例から「コンセプトづくり」ということを学びました。
このように、同じように見える商品やサービスでも、コンセプトを変えればまったく違う土俵ができます。
市場が異なるわけですから、競争ではありません。
最近変わった旅行会社があることを知りました。
ワイバードという会社で、何とバードウォッチングツアー専門の旅行会社です。
旅行業界全体で「格安」「激安」が飛び交う中、あっぱれです。
ついでに、私が身近に見つけた成功例もご紹介しましょう。
懐メロ専門のカラオケ屋。
町の社交ダンス場。
昔懐かしの歌声喫茶。
いつもオンリーワンばかり追い求める私のまわりには、たくさんのオンリーワンの事例があります。
ヒントは、ビッグなメジャー市場ではなく、小さな市場ならいくらでもあるということです。
マスコミやインターネットの情報に惑わされずに、自分を細めてまわりを見渡すことだと思います。
昔、寺山修司の「書を捨てよ、町へでよう」という本がありましたが、「TVやパソコン、携帯電話を捨てて、町を歩こう。人と会おう」です。