シャッターアートの思わぬ効果

シャッターアート。
店が開いている時間に見られないというのが、最大の弱点。

そのため、「せっかくシャッターに絵を描いても、もったいない」とか「看板として意味がない」という声がほとんどで、ビッグアートとしてもこれまであまり積極的に取り組んできませんでした。

春日部駅東口地区、つまり「旧・粕壁宿」の地区に昔の面影を再生してまち歩きを楽しく演出し、来街者を増やそうという「日光道中・粕壁宿」景観再生プロジェクト。
当初は、蔵づくりの建物に調和する建物の装飾塗装や壁画、老舗看板や日よけ幕などの設置をめざしてスタートしました。
ところが、建物に手を加えるとなると、なかなか話が前に進みません。
苦肉の策として、シャッターに「粕壁宿」をイメージする壁画を描いて、宿場町の雰囲気を演出しようと方針を転換。
すると、あっという間に希望者が集まり、4~6月で9店舗も施工することに!
しかも、希望者が次々と名乗りを挙げ、後を絶ちません。
正に、うれしい悲鳴です。
商店会の役員の方々も、「こんな現象はここ20年以上なかった」と驚いています。

短い期間でシャッターアートの思わぬ効果や成果に遭遇し、思わず興奮しました。

<その1>
「シャッターアートは、朝と夜しか見れないから、看板としても景観演出としても効果が期待できない」というのは固定観念だということ。

実施した店主からの意外な喜びの声。
「今まで来たことのない新しい顔の客が来るようになった」
「『今まで10年以上も店の前を歩いて通勤していたのに、店の存在に気づかなかった。』という客が来店した」
「『朝の散歩中にシャッターの絵を見て面白そうだったので』といって昼間来店してくれた客がいた」

ここで気づいたのは、
・昼間見えるはずの看板が、意外と人の目に留まっていないこと。
・昼間は、お店のファサード(建物)のイメージや店頭の演出物、POPなどの方が看板より効果的である。
・文字だけの看板では、目が流れてしまい、特定の看板に目が留まりにくい。
・朝や夜間のお店が閉まっている時間帯の方が、看板が目に入りやすくお店が探しやすい。
・シャッターに絵を描いている店がほとんどないので、目に留まりやすい。
・文字より絵で情報を伝えた方が、一目でわかり印象に残りやすい。
・お店の間口の側面か上方に設置された看板より間口一杯で人の目の高さで見えるシャッターアートの方が、位置的にも、露出面積でもはるかに有利に目に入る。
ということです。

看板はどの店にも付いているが、無数の中から選ばれる確率は低い。
早朝や夜間はほとんどの店のシャッターが閉まっていて無地なので、シャッターアートは突出して目につきやすい。
誰もが頑張っている部分で一番になるのは難しいが、誰も努力していない部分で一番になるのはたやすい、ともいえます。

<その2>
シャッターアートに参加した店主の意識に、大きな変化が現れたこと。
やる気満々で、お店の陳列やディスプレイ、店頭演出まで変わってきたことです。

店主の声からもそれが伺えます。
「シャッターの重みを毎日感じます。この絵に負けないような店にならないと!」
「観光客が入ってくるようになって、道案内や店紹介ができないので、みんなでまちの勉強会をやりたい」
「シャッターに連続して絵を描いていけばもっとまちが楽しくなるから、隣近所にも勧めてみる」
「シャッターアートの絵を店内にも飾った。ホームページやチラシにも活用したい」
「シャッターアートをやった店同士で、新しい販促活動をやっていきたい」
私自身、この10年ほど中心市街地の活性化活動に参加してきましたが、こんな頼もしい元気な声を聞くのはハッキリ言って初めてです。

このように、シャッターアートはお店のお客様や市民に対するアピールだけではなく、店主に向けてのエールの役割も果たしているようです。

そして、店主やおそのお客様たち、市民の方たちの笑顔がまた、私たちのエールになるのです。