春日部市のシャッターアートはここが違う!
昨年の1月に古利根川公園橋の公衆トイレに「日光道中・粕壁宿」をテーマに壁画を描いたのがきっかけで、たった1年間で30ヶ所の街角歴史絵巻(壁画とシャッターアート)を制作しました。
最初の6ヶ月間は、理解を示す人が少なく前途多難な感じでしたが、シャッターアートを実施した店主たちのクチコミなどで理解者が次々と名乗り出て、9月以降だけで20軒も申し込みがあり、あまりの反応に驚いています。
それはそうと、このシャッターアートのことで、いろんな方から様々な質問が寄せられるようになりました。
聞いてみると、どうもそれらは私たちのやっているシャッターアートについて誤解をされているような感じを受けます。
そこで、誤解を解く意味でも「春日部のシャッターアートの違い」をお話ししておこうと思います。
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シャッターアートというと、街が寂れて廃業店が多い、いわゆる「シャッター通り」の活況演出や美化活動から生まれてきたというのが一般的です。
しかし、春日部市の場合は違います。
確かに10年前に比べると、街の繁華街が東口から西口に移り、人通りが減ったのは事実ですが、シャッターアートを描いた店はほとんどが営業している店。
現在30ヶ所のシャッターアートがありますが、営業していない店はたった2軒です。
春日部のシャッターアートは、「粕壁宿景観再生プロジェクト」の一環の活動です。
さびれた街をカモフラージュするのが目的ではなく、街に残っている魅力的な歴史的資源や自然の資源を市民に気付いてもらうための「見える化」運動がきっかけです。
自己主張するアートではなく、粕壁地区の歴史的景観を補完したり、まちの由来や当時の時代風景を説明するための挿し絵としての役割を担っています。
シャッターアートをきっかけに、この地区に住む人々が今まで気付かなかったこの街の魅力に気付き、様々な歴史遺産を大切に守り、街の魅力アップのために活用していく。
市民たちは、自分の街の素晴らしさに気付き、誇りを持って自分の街を愛するようになる。
その結果、市民が街中に集うようになる。
観光客も訪れるようになる。
そんなシナリオを目指しています。
従来のシャッターアートの大半は、シャッター通りをカモフラージュするだけの、どちらかというと消極的な活動です。
春日部のシャッターアートは、街の魅力づくり、埋もれた魅力の「見える化」という戦略的かつ発展的活動、つまり未来への積極的な投資だととらえています。
よく、いろんな方から言われることがあります。
・営業していない店にシャッターアートを描いても、町おこし(町の活性化)にはならないのではないか。
・逆に、活性化されて店が営業し始めたら、シャッターアートは見れなくなるから意味がないのじゃないか。
普通に考えると、ごもっともです。
全国あちこちで見られるシャッターアートは、店がいつも閉まっていていつでも見れます。
それに引き換え春日部のシャッターアートは、店が営業しているので、最初から店休日か早朝の開店前しか見ることができません。
確かに、一見ムダなことをしたように見えます。
私自身、やってみるまではそのことを危惧していました。
シャッターアートを描いても、街に人を呼べなければ、店が元気にならなければ大失敗に終わります。
そこで、シャッターアートを実施した店主たちがシャッターアートを店や街の集客につなげるための勉強会「かすかべ元気印の会」を結成しました。
その会は、会議で何かを決定する会ではありません。
シャッターアートを使って各店がいろんな販売促進活動を工夫し、その成果を発表しあう会です。
人の成功事例を聞いて自分の店に取り入れるもよし、負けじと別のアイデアを出して競うもよし。
真剣に考えて行動すれば、必ず突破口がみつかる。
まして、多くの仲間がいて、競ってアイデアを出し、即実践していったら恐らく半年で成果が出てくると確信しました。
案の定です。
もともとシャッターアートに取り組んだ店主は、問題意識と危機感を持ったやる気意識の高い人たちです。
あっという間に、自分たちが先頭に立って街を変えていこうという機運が高まりました。
・シャッターアートの絵をDMハガキにしてお得意様セールをやり、期間中は目印のためにシャッターを閉めて営業したら過去最高の売上を記録したという店主。
・シャッターアートの絵の中に登場する主人公を店のキャラクターとして愛称をつけてストーリー展開をし、お店にストーリーを作っている若い女性店主。
・名刺やホームページのメイン画像にシャッターアートの絵を活用し、店のイメージづくりをしている店主。
・「春日部」よりインパクトのある「粕壁」の地域ブランド商品開発を始め、シャッターアートの絵をラベルに活用している店主。
・シャッターアートの絵ををキーホルダーにして、販促プレミアムにしている店主。
・シャッターアートをアイキャッチャーとしてアピールするために、開店時間を遅らせシャッターアートをできるだけ長く見せている店主。
などなど。
最近は、「一店一もてなし」を各店が工夫し始めています。
シャッターアートが見るものだけでなく、店主たちのやる気づくり、そして応援旗としても威力を発揮しています。
まさに意外な展開です。
シャッターアートを店のシンボルイメージにして客に印象づけをしたいという要望から
・シャッターアートが見られない時間帯もアピールするために、シャッターアートの絵をパネルにして店頭に飾る。
・シャッターアートの絵をスタンプに入れてスタンプラリーを定期的に企画する。
・全部のシャッターアートの絵をキーホルダーにして、粕壁宿のプレミアムグッズにする。
というアイデアが出て、もうすでに実行に移しています。
「元気印の会」に参加している人がすべてやる気満々の若手店主なので、行動の早さはすごいです。
ビッグアートとしても、せっかく描いたシャッターアートの活用方法を提案し続けなければなりません。
その一つが、シャッターアートのライトアップです。
店休日か早朝しかシャッターが閉まらないということは、平日は近所の散歩する人か、通勤通学で通る人しか見れません。
昼間シャッターが閉まっているのは、街が死んでいるということ。
ならば元気な街のシャッターアートの新しい楽しみ方として、夜ライトアップすることで、逆にまわりが暗いことが絵を引き立ててくれる訳ですから最高です。
できれば、まわりに点在する蔵づくりの建物もライトアップしたらどうでしょう。
粕壁宿の歴史や当時の時代描写をした歴史絵巻と蔵だけにスポットを当てたら、まさにタイムスリップしたような劇場空間に早変わりして、街がエンターテインメントなワクワク空間に!
もう一つは、シャッターアートの絵を観光ガイドの説明に活用してもらうことです。
もともと、歴史スポットの近くのシャッターにその歴史を描くというのが、デザインコンセプトなのでそれが一番の活用法なのです。
実は、3月から早速シャッターアートと歴史を巡るまち歩きツアーをボランティアガイドさんたちが企画しているようです。
また、ガイドさんがいなくても、シャッターアートを見ながら粕壁宿を巡れば、より当時のイメージが湧きますから、一人でまち歩きする人にも喜ばれると思います。
そのため、「シャッターアートと歴史巡り」のマップ付きチラシも3月中旬までに配布できるように準備中です。
もともとシャッターアートを実施した店主だけで結成した「元気印の会」ですが、ボランティアガイドさんや春日部情報のウェブサイトを運営している人、建築家など様々な立場の人が加わって、活動の範囲が一気に広がっています。
私は今、その会の座長もやらせていただいています。
ちょっと、話が広がってしまいましたが、シャッターアートをきっかけに春日部(粕壁)を愛する人たちが集まり始め、次代の「かすかべ」をつくる原動力として熱く語り、行動しています。
ちょっと違う春日部のシャッターアート。
少しはご理解いただけたでしょうか。