マルチデザイナー求む!
ビッグアートはアート会社というより、アートをデザインする会社です。
アートの制作が主体のようですが、その本質はデザイン会社です。
言い換えれば、アートは目的ではなく手段なのです。
建物の表情や空間の雰囲気をアートという手法を使って、改善したり創造するのがビッグアートの本業です。
結果、それが壁画になったり、壁にを色やテクスチャーで装飾することになったり、オブジェを設置することになったり、アート的な看板をつけることになったり、・・・と、その物件の特性や目的や予算などに応じて自由自在に様々な素材や手法を組み合わせていきます。
一般の会社では、扱っている材料とか手法が決まっていて、定型的な仕事を繰り返すのが通常です。
ビッグアートの場合は、建物とか空間が対象ということと、アートという手法で問題を解決したり、めざすイメージや雰囲気を実現するよいうことだけが決まっているだけで、それ以外は毎回ゼロから考えます。
例えば、看板屋さんなら、看板の材料としてアクリルやステンレスや塩ビフィルムなど最初から決まった材料があり、カッティング文字やインクジェット出力という決まった手法がある。
看板を頼まれたら、限られた材料と手法を目的に合わせてチョイスするだけです。
ビッグアートの場合は、看板を頼まれても、看板材料を使うとか看板屋さんの手法を使うことはまず考えません。
お客様の特性や個性、環境特性などを最大限に生かすことを検討してから、何をやるか、何を使うかを決めていきます。
喫茶店の看板を頼まれたとして、コーヒー豆とかズタ袋とか木樽など本来の看板材料ではないものを使うことがよくあります。
建物が個性的であれば、ペインティング(装飾塗装)やライティング(照明演出)だけで看板効果を出す場合もあります。
大きな木を植えてシンボルツリーを看板にすることもあります。
店の前を通ると、面白い音が聞こえてくるという音の看板だって考えられるでしょう。
とにかく、お客様の事情や個性を汲み取って、奇想天外な発想で効果的かつオンリーワンの看板を提案します。
経営効率は著しく悪いのですが、オンリーワンの提案、オンリーワンのものづくりをすることが、お客様が最も喜んでいただけることですし、作り手にとっても最高の喜びだからです。
片方では、他社が真似しようがない仕事をすることで、不毛な同質競争や価格競争に陥ることなくマイペースで経営できます。
話しを元に戻します。
ビッグアートは、目的にさえ合っていれば、自由な発想でアートをデザインし制作することをポリシーにしています。
しかし、残念ながら求人で応募してくる人たちは限られた手法にしか興味がないとか、絵を描きたいだけでデザインはしたくないという単能的な人ばかりです。
5~6年前までならそれでもよかったのですが、経営環境がすっかり変わりました。
以前、「雇用のミスマッチ」について語りましたが、正にビッグアートの悩みそのものなのです。
会社が求める人材像と求職者の間に大きなギャップを感じます。
以前、このブログ「絵を描く仕事ならあります」で書いたように、アートに対する潜在需要は確実に高まっているのを実感します。
しかし、顕在需要は大不況とともに急激に落ちているのが現状です。
つまり、潜在需要はあっても、企業側がそれを掘り起こすことができていない状態が続いているということです。
これは、アートの分野に限ったことではありません。
あらゆる産業に言えることです。
従来型の顕在需要にばかり目を向け、仕事の取り合いばかりしているから、価格競争が激しくなり、生き残ることが難しい。
潜在需要を掘り起こすということは、仕事を取り合うのではなく、「提案すること」「新しい種を蒔いて育てていくこと」です。
絵を描く仕事は、実は水面下に無限に眠っています。
それを掘り起こすのは、新しいアイデアとデザインが必要です。
ビッグアートの基本コンセプトは、「エンターテインメント」です。
「人をワクワクさせること」です。
出来上がった作品だけを見ると、ビッグアートは単なるアート制作会社です。
だから、求める人材は美大や美術専門学校卒で、その中でも絵画や彫刻が最も近いように思えます。
ところが、実際は全く違います。
確かに、技術面だけであれば近いように見えますが、それ以前に「人をワクワクさせること」を常に考えられる人、そこに情熱を傾けられる人でなければなりません。
そして、それを具体的なプランやデザインに落とし込む作業が最も大変な仕事なのです。
その作業が、全体の70~80%を占めます。
絵を描く作業は、残りの20~30%に過ぎません。
絵を描くことしか興味のない人は、入社してもほとんど出番がないことになります。
簡単に言うと、「絵の描ける人」ではなく、「絵も描けるデザイナー」もしくは「デザイナーであり演出家」がビッグアートの求める人なのです。
もちろん、グラフィックデザインが一番中心になりますが、「アパレルグラフィック」「ファッションデザイン」「染色デザイン」「造型デザイン」「アクセサリーデザイン」「プロダクトデザイン」「サインデザイン」「ディスプレイデザイン」「舞台美術デザイン」「インテリアデザイン」「照明演出デザイン」「ガーデンデザイン」「カラーコーディネート」・・・・等々、ビッグアートの仕事は多岐にわたり、ボーダーレス・デザインといった方がいいと思います。
つまり、デザインの中でもジャンルを超えて興味を持つ人が求められます。
ジャンルに全くこだわらずにクリエイティブ力を発揮する「マルチデザイナー」こそがビッグアートで最も活躍できる人なのです。
表現の幅の広い人。
引き出しをたくさん持っている人。
創作のためには一切の枠を外せる人。
近年の教育システムでは、単能な人材の大量生産に偏っているので、そんな人材を探すのは至難の業です。
ですから、従来のように新卒や若手だけにこだわった採用では限界を感じます。
年齢の幅を広げること。
主婦や地方在住の人などの在宅雇用も視野に入れなければいけなくなったようです。
とはいえ、最初からマルチデザイナーとして仕事のできる人を探すのは困難です。
その意味では、最低限マルチデザイナーとしての資質や志向の強い人であれば十分です。
環境とチャンスがあれば必ず育ちます。
問題は「好奇心」と「やる気」と「行動力」「忍耐力」です。
絵を描く技術やものづくりの技術は最初は全くなくても、毎日仕事でやっていれば否が応でも身についてきます。
逆に、入社時にある程度の技術を持っていても、好奇心」「やる気」「行動力」「忍耐力」の低い人は一年もしないうちに抜かれていきます。
その意味では、技術面だけではなく、人間力や態度力を重視した採用基準に移行していく必要があります。
従来のような狭い範囲での求人活動から、すべての枠やハードルを超えて求める人材を探していく。
どんな人との出会いが待っているのか。
その出会いから何が生まれてくるのか。
未知へ向かって始動することは、心躍ります。