都市景観審議会

昨年10月に「春日部市都市景観審議会」の委員に選ばれました。
今日は2回目の会議です。

委員は、デザイン、色彩、景観、建築、法律、都市計画、観光、建設の8人の専門家計と公募市民2人の計10人で構成されています。
中でも建築や景観、色彩の分野の方は全国で活躍されている大学教授や第一線の専門家で中央の方、つまり春日部市民ではありません。
私はただ一人地元代表のデザインの専門という立場で参加しています。
公募で選ばれた方は、声楽家の方とNPOで活動されている方です。
市役所からは副市長と都市計画課の職員の方という顔ぶれです。

公開の会議で一応傍聴も可能らしく、議事進行も堅苦しくて重苦しい雰囲気。
ちょっと緊張します。
ともあれ、これから1年余りかけて「都市景観計画案」を審議し、最終的には景観計画の策定と景観条例の制定まで関わることになります。

春日部市は、2009年4月から景観行政団体になりました。
景観行政団体は、全国では2009年12月1日現在で428団体あるそうです。
埼玉県では、さいたま市、川越市、秩父市、戸田市、八潮市、草加市、川口市、新座市、三郷市、熊谷市、志木市、越谷市、春日部市の13市です。
景観行政団体になると、政令市や中核市並みの権限をもち、景観にそぐわない建築物に厳しい規制を課すことができます。
この審議会は、そのための景観条例制定の諮問委員会ということになります。

国の号令の元、遅れてはならじと全国の市町村が景観行政団体の仲間入りをし、これから各地で景観条例が作られ施行されて行きます。
今後自分の住む町の景観を左右するということと、私自身看板や建物の外装デザインに関わっているということで、他人事ではなく真剣に関わっていきたい課題です。

ただ、ここで大きな疑問と不安があります。
それは、都市景観についての意識や理解が低い日本の現状で、本当にまともな条例が作られるのだろうか。
中央にすら専門家がほとんどいないのに、地方に見識のある人が一体どれだけいるのだろうか。
しかも、短期間で全国一斉に条例が制定されるとなると、コピペのような条例が氾濫することにならないのか。
議論の土俵すらできないうちに、プロのコンサルタントの作った模範的で判を押したようなプランがそのまま通っていって、日本中が無個性なつまらないまちばかりになる危機感を強く感じます。

そもそも、なんで急にこの話しが浮上し動き始めたのでしょう。
地方分権とか地方主権の推進という考え?
観光立国を目指そうという考え?
かつての一億円ふるさと創生事業がよみがえって来ます。
結局、本質を理解しないまま、一部の人たちだけで軽はずみな条例ができ上がり、その町の運命を左右することになるのです。
ふるさと創生事業は、一過性のものでしたし、税金の無駄遣いで終わりましたが、景観条例となると長年継続していくわけですし、ましてや建築物や看板などの強制力を持つわけですから、地域の文化や経済にまで影響がおよぶ可能性が強いわけです。

ここで、今日の会議のほんの一部を紹介します。

全国各地の景観審議会に携わってきたという議長(東大教授)の解説によると、景観条例づくりには大きく2つの方向があるといいます。
一つは、明確な伝統と歴史のあるまちのケースで、強力な規制で伝統文化を守るという方向。
もう一つは、取り立てて特有の歴史や文化を持たない個性の薄いまちのケースで、理想のあるべき姿を設定して新しいまちづくりを目指すという方向。
なるほど、わかりやすい。
議長は続けます。
「春日部は、どちらかというと後者に近いかと思われます」
「えっ!?」
私は、思わず手を上げて発言しました。
「春日部は、数年前までは明らかに前者でした。ただ、近年駅前の開発やマンション建設の急増でその姿が次々と消えかけているのです。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(中略)
今さら遅すぎるようなあきらめのムードがあるのは事実ですが、まだ間に合うと思います」
私の発言をキッカケに、ようやく会議が動き出しました。
それまで、教科書のような一般論ばかりでピンとこない発言ばかりだったのが、地元委員の人の目の色が変わりました。
そのあと、白熱した発表が続き、ようやくこの会議の手応え感が出てきました。
と同時に、この席に誰がいるかで会議の流れが右か左に方向づけられるという怖さを痛感しました。

今日の会議は、今後どのように審議を進めて行くかを確認しただけで、本題に入るのは次回からです。

私は、委員に選ばれたことを本当にありがたいと思います。
自分の知らない間に、私の仕事に重要な影響がある景観条例が決まってしまうのではなく、ど真ん中で当事者になれたということは最高にうれしいです。
同時に、身の引き締まる思いです。
春日部市がただの絵に描いたようなキレイなまちではなく、面白くて活気に満ちたまちになることをめざしてがんばります。

今後の審議会やまちの動き、私の地域活動についても報告していこうと思います。