アートの仕事は無限に広がる!
アートは、長い間学問の世界に封じ込められてきました。そのため、「美大を出ても仕事がない」という現実を、当然のことのように受け入れてきました。果たしてそれでいいのでしょうか。本当に仕事がないのでしょうか。
仕事は山ほどあるのです。では、なぜ・・・・・・。
正確に言えば、「仕事はあるけど会社(職)がない」のです。私は、今のアート制作会社を始めて以来、そのことを痛感してきました。アートは、量や質というモノサシでは計りにくい、便利性という面でもとらえにくい、という点でビジネスにしにくかったことは事実です。しかし、アートでいろいろな問題が解決したという事例を、私は自分の仕事でたくさん体験してきました。
例えば、「狭い空間があ広く見えるようになった」「人気のない通りや地下道が人通りが多くなった」「恐くて通れなかった通りが安心して通れるようになった」「落書きがなくなった」「店の集客がアップした」「店の評判がよくなった」・・・・などなど。それらは明らかに人々の問題を解決したり、企業に利益をもたらしたりと明らかに社会に貢献しているのです。同じ問題を解決するために、建築や内装、塗装、看板などの業者には仕事を依頼している。しかも、工事はやったが効果は見られないというケースが多い。ならば、アートでこれらの問題を解決したらビジネスになるはずですよね。なのに、そんな商売が日本では見当たらない。どうして?
ビッグアートでは8年前からこのことに着目して、アートが社会に役立ち、多くのアートを志す若者たちが活躍する状況が作れないかと、孤軍奮闘してきました。しかしながら、零細企業一社だけが騒いでもしょせん微力。頭の堅い先輩の芸術家たち。保守的な美大などの学校。特に、美術評論家や美大の教授陣は最も大きな抵抗勢力となっています。彼らは、アートの芸術性、学問性のみを唱えて、アートを社会のために有効活用することになかなか関心を持とうとしません。美大の存在意義が問われます。
もう一つ問題があります。それは、アートが細かに分類されていて、それぞれが縦割りになっていて、それぞれの間に大きな垣根があるということです。油彩とか水彩とか日本画とかのように・・・・・。何かを表現するのに、特定の表現手法にとらわれる必要があるのでしょうか。勿論、ひとつの手法を極めるというのもあっていいと思いますが。ここで、大きな発想の転換が必要だと思います。作り手志向から客志向(目的志向)への転換です。仕事としてのアートは、自分が主役ではなく、「お客様の問題を解決すること」「お客様をよろこばせる」ことが目的ですから。だとすれば、アートの分類や手法などどうでもいいことです。アートの分類の垣根を超えて、自由な発想で創作やデザインをしていく。
ビッグアートは、もともと壁画制作会社としてスタートしましたが、お客様の立場で仕事をしていくうちに、だんだんコンセプトが変わってきました。今は、壁画、オブジェ、デザイン塗装を組み合わせた空間づくりを行なっています。
まだ、自分の会社のコンセプトを一言でうまく言い当てる言葉がみつかりません。「建物や空間の美容師」というのが今のところ一番近いでしょうか。建物の欠陥や問題を、その個性を生かしながらアートでメイクアップして、チャーミングにしていくこと。「空間演出アート」という新しい切り口で、新しいアートの仕事を切り開きたいと思っています。にそのためには、壁画やオブジェ、デザイン塗装のみならず、光や音、香りにも挑戦したいと思います。
ビッグアートの試みは、アートを仕事にしていくための単なる一例に過ぎません。アートをアートとしてしか見ないのではなく、アートを活用して人のために役立つという視点にたてば、まだまだたくさんのビジネスが生まれることでしょう。実際、私の頭の中には次々と面白いアイデアが浮かんできます。「アートのビジネス化」。これこそが美大を始め、我々が今すぐに取り組まなければいけない課題だと声を大にして言いたいです。既存業界での閉塞感、過剰な競争も、既成概念にとらわれて、人と同じことばかりやってきた結果です。人と違うこと、自社にしかできないことから独自のビジネスを開発していけば、アートは大きな産業に発展するでしょう。店づくり、まちづくり、マンションや家づくりの分野で、「個性」「感性」「異空間」などというキーワードがテーマになっています。まさに、「五感産業時代」の幕開けです。
今アートを志している若者たちに伝えたい。今、社会はアートやデザインを強く求めています。ただ、今の日本ではまだそれに応える会社がほとんど存在していないだけです。では、社会が変わるまで待ちますか。待っても来ないかも知れません。行きたい会社が存在しないなら、新たに創るしかないですよね。
自分のためにアートをやりたい人ではなく、人のためにアートで役に立ちたいと思う人、私たちと一緒に道を切り開いていきませんか。