建築医学との出会い

今日は、「日本建築医学協会」の全国大会に出席しました。

昨年、懇意にしている壁材メーカーの社長に誘われて参加したのが最初で、これが2度目です。

昨年初めて参加した時、感動と喜びが全身を駆け抜けたのを覚えています。
いろんな分野や立場から、私と同じ夢(ゴール)をめざしている人たちがいたこと。
医学や建築について私が疑問を抱いていたことが、それぞれの専門分野から解き明かしてもらえたこと。
目からウロコというか、自分の体験から得た実感が次々と証明されていく時、戦慄に近いものを感じました。
と同時に、「今までやって来たこと、これからやろうとしていることが間違っていなかったんだ」という自信と勇気が湧き上がってきました。

「建築」と「医学」、一見あまり関係のなさそうな二つの分野ですが、実は切っても切れない関係なのです。
以前ある人から「建物が人をつくる」という言葉を聞いて、ハッとしたことがあります。
まさに私たちの生き方や人間性とは、私たちを取り巻く住環境、特に自分の住んできた「家」によってつくられているのです。
ちょっと具体的に考えてみましょう。
・一日中、光の入らない家で10年も20年も生活したらどうでしょう。
・風通しの悪いジメジメとしたかび臭い家で生活したらどうなるでしょう。
・部屋の中が雑然としていて、ゴミ箱のような家で生活したらいかがでしょう。
・コンクリートやプラスチックの壁に囲まれて生活したら・・・・。

環境と精神と身体は密接な関係にあります。
現代の社会や環境は、私たちを一日中スポイルしています。
ネガティブシャワーが振り続け、ウィルスのように私たちの心を蝕んでいます。
経済不安、社会不安・・・・孤独・・・・本来の人間の本能「支え合って生きる」「お互いさまという寛容な気持ち」が壊れ始めています。
「死ぬことが一番健康だ」といった人の言葉が浮かんできました。
つまり、現代社会においては「生きることが一番身体に悪い」のかも知れません。

いつもイライラしている人が増えてきた。
キレやすい人が増えてきた。
愛する人までも平気で殺す人が増えてきた。

もちろん、経済不安や社会不安、疑心暗鬼な人間関係などが引き金のようにも見えますが、根源はそこにはないように思います。
それらは歴史上何度も経験してきたことです。
つまり、台風や地震、果ては戦争といった「現象」と同じです。
問題は、そういう試練にぶつかった時に、「どう受け止めるか」「どう立ち向かうか」という人間性に異変が起きていることです。
人類は過去に、想像を絶するような苦難を「愛」と「勇気」そして「助け合い」「夢」などで乗り越えてきました。
今あげた「愛」「勇気」「助け合い」「夢」が希薄になってきたこと。
それらは、まさに住環境や人間関係の中で育まれていくものだと思います。

コンクリートの集合住宅によって、他人に患わされないプレイバシーは確保できたかも知れませんが、家族単位または個人単位にコンクリートの厚い壁で遮断され、孤独な人が増え、心の病を持つ人が急増しているのです。
最近、鬱病で自殺を図る人が増えています。
昔なら、家庭におじいさんおばあさんもいて、やさしく見守ってくれたり、近所の人たちに癒されたりして、心の病になる前にバランスをとってきたものです。
自分の精神のバランスをとるのが実に難しい現代の生活環境。
精神のバランスの崩れが、現代病の根源のように思います。

鬱病やガンなどは、以前はあまり聞かなかった病気です。
まさに現代の私たちを取り巻く環境が生む現代病です。

私たちは、1日のうちの85%の時間、半径5m以内しか見ていない、と言われています。
1日のほとんどの時間が、家と会社と電車の中。
週末も家で過ごすか大型ショッピングセンターやホームセンターに行く程度、という人がほとんど。
ちょっとゾッとしますが、都心で暮らす人の標準パターンだと思います。
だとしたら、自宅と職場の環境がその人の人格形成をしているとも言えます。
職場の環境は、自分だけで変えることはできません。
しかし、自分の住む環境は自由に選べ、自分に合わせて自由に変更することもできます。

私が今まで「空間演出デザイン」「ウォールアート」でめざしてきたこと。
それは、人々の生活環境の「雰囲気をデザイン」することで人やまちを元気で幸せにしたい、ということです。

特に私がテーマにしていることは、

私たちを取り巻く空間(特に建物)を
・色や質感が人の心理に与える影響
・絵画やパターン(模様)による雰囲気の醸成
を駆使して、人々の心理や気分をプラスの方向に誘導することです。
それによって、人々が癒されたり、元気になったり、勇気が湧いてきたり、ワクワクしたり、温かくやさしい気持ちになったり・・・・といった気持ちのプラス転換を図っていくことで、病気が直ったり、犯罪がなくなったり、家庭や職場や街が楽しく元気になっていく。

それがビッグアートのめざす領域です。

次回は、講演の内容の一部を紹介します。