仕事始めは、戸越八幡神社のお神楽殿!


年明け最初の現場は、戸越八幡神社のお神楽殿の雨戸の壁画です。
こいつぁ、春から縁起がええわいな~!

といっても、実は年始に間に合わせようと年末ぎりぎりに一旦収めた仕事の最終調整と追加です。
年末は毎年、地元・春日部の藤塚香取神社の絵馬描いたばかりで、神社との縁が続きます。

絵の内容は、新しい雨戸にベンガラ塗料で古美塗装した上で、
・正面(雨戸6枚)・・・・3年に1度執り行われる伝統行事「御本社御輿渡御」の絵図
・両側面(雨戸各4枚)・・・桜の花
ですが、すでにアトリエで描いてから設定したので、桜の花の描き足しと登場人物の細かい表情の修正だけです。
面積が小さく、人物が100人近く登場する細かい絵で、描き手の癖が出やすいので、一人の女子社員に任せました。
私の役割は、監修と指示だけです。

初日は、段取りと準備作業だけだったので、2人だけで夕方に現場入りしました。
感激です!
以前は暗かった神楽殿がライトアップされて壁画がくっきりと浮かび上がり、しかもヒーリングミュージックがかかって、なんとも言えない幽玄な雰囲気が漂い、訪れる人々の心を癒してくれます。
昼間の境内よりも、夜の方が独特の異空間性が出て素敵でした。
発注者の宮司の奥さんの心配りです。

こんな風に、私たちの仕事を納品したままではなく、それに呼応するように、自分の服のように自分の感性で着こなしてもらえることは、空間づくりを提案する立場の私にとって最高の冥利です。
自分らしい空間イメージをつくることは、専門業者に丸投げでは絶対にできません。
私たちができるのは、相手の話を聞いて整理すること、それを形にするための方法の提案と必要な専門技術の提供です。
それを自分の一部として着こなし、味付けをしていくのはあくまでお客様自身しかありません。

施工を終えた後何年間も、引き渡した状態と同じの物件を見ると寂しくなります。
そんな時は、オーナー様とお会いして演出のヒントなどをアドバイスするようにしてます。
ただ、無理強いする訳にもいかないので、あとは本人の意識に任せざるを得ません。
今回のように、早々と作品を活用して使いこなしていただけるのは最高です。

お客様は私の姿を見るたびに、境内が大変身したことの歓びの声と終始今後の展開についての質問攻めででした。
建物の古美塗装、多の建物や樹木のライティングテクニック、参道の演出、境内イベント・・・・等々、今後の構想や展開アイデアを熱く語り合い、今後も継続してお手伝いすることをお約束しました。

それにしても、お正月も終わった時期なのに、この神社には次々と参拝客が訪れます。
早朝から夜遅くまで、しかも高齢者、買い物途中の主婦、若い男女と層が広く、地域に参拝が文化として根付いているんだなと感心します。
よくみていると、近所の人が毎日参拝していたり、通勤途上の行き帰りに毎日参拝しているビジネスマンが多く、人なつっこく絵を描く作業を見入ったり、話しかけてきます。
下町の人情がまだちゃんと生きています。
たった3日間でたくさんの顔見知りができたと、女子社員は感激していました。
後で、帰りの道すがら女子社員が「こんな由緒ある神社に自分の絵を描かせてもらって、しかも描いている途中で地元の人から声をかけられたり差し入れをもらったりして、顔見知りの人までできて、まるで自分の故郷のようです。戸越銀座が急に身近に感じて、しょっちゅう来てみたくなりました」と感激冷めやらないようでした。

そう、ビッグアートの仕事の本当の歓びは、絵を描くことそのものより、「作品を通して、人や街と自分との物語」をつくることです。
彼女の心の中に、この戸越銀座のような「物語」が次々とつくられるようになった時、彼女はもうこの仕事の虜になっているはずです。